ちくま文庫版全集第1巻所収本文(底本) | 頁・行(底本) | 『年刊小説 1932版』(『詩と詩論』別冊・昭和七年一月十八日発行)所収本文 |
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東京市某町某番地なる | 38・2 | 東京市某区某町某番地なる |
風博士を御存知であろうか? ない。嗚呼。 | 38・3 | 風博士を御存知であらうか? 御存知ない。それは大変残念である。では偉大なる風博士が自殺したことも御存じないであらうか? ない。嗚呼。 |
感じていることも御存じあるまい。 | 38・5〜6 | 感じてゐることも御存じないのであらうか? 於戯。では諸君は僕が偉大なる風博士の愛弟子であつたことも御存じある まい。 |
なぜならば、それは諸君の | 38・10 | なぜならそれは、諸君の |
憎むべき蛸である。 | 39・11 | 憎むべき蛸である、 |
門にあらゆる悪計を蔵す | 39・11 | 内にあらゆる悪計を蔵(カク)す 語釈を見よ |
購われたることを記憶せざるや。一人は | 39・15〜16 | 購はれたることを記憶せざるや、一人は |
もしも諸君が仏蘭西、西班牙両国の国境をなすピレネエ山脈をさまようならば | 40・9〜10 | 他日諸君が外遊のみぎり、仏蘭西、西班牙両国の国境をなすピレネエ山脈を 逍遥せらるるならば、 |
山中に散在する | 40・10 | 山間に散在する |
逢着するのである。 | 40・10〜11 | 逢著せらるるであらう。 |
西欧の全人種に隔絶し、 | 40・11 | 西の全人種に隔絶し、 |
成吉思汗 | 40・15〜41・1 | 成吉思可汗 |
その消息を失うたのである。 | 40・16 | その消息を失ふた。 |
膺懲せよ、憎むべき悪徳漢! | 42・1〜2 | 懲膺せよ憎むべき悪徳漢! |
所以を | 42・3 | 故以を |
見出すのみである。 | 42・4 | 見出すのみ。 |
隠してのち夜陰に | 42・5 | 隠してのち、夜陰に |
溢れ出る涙を禁じ難かったのである。 | 42・9 | 溢れ出る涙を禁じ難かつた。 |
ああ諸君、おお諸君、余は | 42・12 | ああ諸君、おお諸君。余は |
悪略神の如しとは之か。 | 42・12 | 悪略神の如しとは之か、 |
隠されていたのである。 | 42・14 | 隠されてゐたのであった。 |
余の力を以てして、 | 42・15 | 余の力を以つてして、 |
平なる地上より | 42・16 | 平和なる地上より |
これを怪しいと睨んだのである。 | 43・5 | これは怪しいと睨んだのである。 |
感化せしめずにはおかなかったのである。 | 43・12 | 感化せしめずにはおかなかつた。 |
交錯する為に、 | 43・15 | 交錯するために、 |
美しい少女であった。 | 44・3 | 美くしい少女であつた。 |
いわねばならない。 | 44・4 | 言はねばならない。 |
夜が明け放れたのである。 | 44・10 | 夜が明け放たれたのである。 |
駆けつけた。 | 44・13 | 駈けつけた。 |
長椅子に埋もれて飽くことなく | 44・14 | 長椅子に埋もれて、飽くことなく |
僕は階段の途中に凝縮して、 | 45・16 | 僕は階段の途中に凝視して、 |
その慌しい跫音を | 45・16 | そのあわただしい跫音を |
然り風である風である風である。 | 46・3 | 然り風である、風である風である。 |